「その言葉、待ってた」


『…もう話はないでしょ。じゃ』


「待った」


教室から出ようとしたあたしを、麻生が止めた。


あたしはため息をつきながら振り返った。




「俺が名前を呼ぶか、神谷が名前を呼ぶか選んで」


『…呼び捨てじゃなきゃいい』


これ以上しゃべりたくなくて短くすませる。


だいたい、なんであたしがコイツの名前なんか…。



「りょーかい。あとさー、付き合った条件とか全部内緒で。誰かにばれてもダメ」


『……』


条件多くてウザい。


でも、不機嫌なのはあたしだけ。

目の前の麻生はニコニコしてる。


あたしは黙って教室を後にした。




――別に好きだから付き合うわけじゃない。


あたしはあたしの場所を守るために「付き合う」って言っただけ。



だけど、これは梨沙達に言えない。



でも、表向き付き合ってることにはなってるし…。


一夜と朝日は、きっとすごく驚くんだろうな。


なんか麻生の事嫌ってたっぽいし。


一夜は双子なのになんであんなに嫌ってるんだろう。



“アイツに近づくな”



一夜はこうなることを予測してた――…?