「奈央。こっち向けよ。」


「…っ!!」



か、顔が近い…っ



突然、正面へと向けさせられた視線は、どうしたら良いのかわからずに宙を漂う。



「……そんなに似合ってた?俺。」


「な、なにが…」


「それとも。……奈央って眼鏡に弱いの?」


「ち、ちが…っ!!」


「クスッ。動揺しちゃって…可愛いな、奈央は。」



動揺、というところをわざと強調して言う。



絶対わかって言ってるんだ…!!



あぁ!!もう…!!



なんで教えてもらおうなんて思ったんだろ…



おとなしく武ちゃんに教わっておけば良かった!



「ゆ、ユウの馬鹿っ…!!」


「あれ?それって、仕事休んでまで教えてあげた人に言うセリフ?」


「そ、それは………っていうか仕事休んでなんて、あたし頼んでないし!」


「それはそれ。結果として、俺は仕事を休んで奈央に勉強を教えてあげたわけだし。…ね?」



ゔ…



た、確かに言う通りだけど…



あたしはユウに言い返すことが出来ずに、ごまかすように勉強道具をしまい始めた。