「あー誤魔化した!」
「いや、別に誤魔化してるわけじゃ…」
「じゃあ何?」
「……姉貴だよ。姉貴が昨日帰ってきたんだ。」
「へぇ〜」
武ちゃん、お姉さんなんかいたんだ。
ってことは、このいい香りはお姉さんの匂い?
そういえば車の中も、微かに甘い香りがしている気がする。
「いい匂い〜」
「そか?」
武ちゃんは一瞬、眉をよせてそう言った。
お姉さんのこと、嫌いなのかな?
というか、あんまり仲良くない…?
あたしには兄弟も姉妹もいないから、そういう気持ちはわかんないけど
きっと楽しいんだろうな〜
毎日、いっぱいお喋りして、時には喧嘩したりして…
「いいな〜武ちゃん」
「はいはい。いいから、家ついたから降りろ。」
「はーい!…ありがとね、武ちゃん。」
「あ、あぁ。」
歯切れの悪い武ちゃん。
あたしは車から降りて、もう一度お礼を言って頭を下げた。