今までは、武ちゃんって周りの大人よりもあたし達の近くにいて
それが当たり前だと思ってた。
でも最近、武ちゃんは急に大人になった。
もちろん、あたしより8歳も年上だって事はわかってたけど
実感としてなかった。
車を運転したり、カバンを持ってくれたり…
そういうことが大人っぽくて
だから、急に大人になった武ちゃんが、何だか遠くにいってしまった気がして
……怖かった。
でも……
妙に綺麗好きなとことか、たまに照れたように顔を背けるとことか
やっぱり武ちゃんは武ちゃんなんだ。
「意味わかんね…」
「いいよ。わかんなくて。」
「馬鹿にしてんだろ。」
「してませーん!」
それに、今までと変わっていくのは怖いけど
こうして笑いあえてる。
それだけで十分だよ。
「あ!そういえば、武ちゃんから甘い香りがしたんだけど…」
「あ〜…」
気まずそうに目を逸らす武ちゃん。
信号が青になって、誤魔化すように、また車が走り始めた。