顔をあげると、なんだか少し照れくさそうな顔をした武ちゃんが、あたしのカバンを持っていた。
「ちょっ…カバン」
「…送ってく。」
「へ?」
「もう遅いし、さ。車で送ってくよ。」
「あ、うん。…ありがと」
…あぁ、そっか。
これだ。
やっと胸に支えていたものがわかった気がする。
最近、武ちゃんとの間に感じていた溝──
「乗れよ。」
「おじゃましまーす…」
武ちゃんが運転する黒い車。
種類とかはよく分からないけど…
「クスッ。」
「なに笑ってんだよ。」
「いや、やっぱり綺麗にしてるんだな〜って。」
「車なんか散らかしようがないだろ。」
そう言って、武ちゃんは顔を前に向けた。
少しだけ、静かになる。
「武ちゃんさ………変わったけど変わってないよね。」
「は?」
あたしが最近感じていた溝。
それは武ちゃんが、大人の男の人なんだって実感したから。