「……柏木さん、裕二のくっだらない質問に、いちいち真面目に取り合わなくてもいいのよ」


俺は柏木さんを見てちょっと笑った。


「くっだらない、って何だよ」


柏木さんは目だけをちょっと上げると、咎めるように眉を潜めた。


「麻野さんは私に気を遣って下さったのに、そんな言い方ってないですよ」


いや、裕二が柏木さんに話しかけるのは別に気を遣ったわけじゃなくて、柏木さんの気を引きたいからで……


って、あぁもうっ!俺ってワルモノ??


ビールのジョッキを優雅にテーブルに置いて、柏木さんは俺を見た。


「ごめんなさい。ちょっと言い方がきつかったようで……」


「え?」


俺は顔を上げた。


「いや、俺別に落ち込んでないよ?」


嘘だけど。そりゃちょっとは落ち込んだけど。


柏木さんが僅かに目を伏せて、ゆっくりとまばたきをしている。


でも、柏木さんがしょんぼりすることなんてないよ。


この人……


冷たいと思ったけど、そうではなくて。


ただ、不器用なだけじゃないかな。


「それよりさっ。好きなタイプがいないってどういうこと?」


俺は話題を変えようとわたわたと、手を振った。


「そうそ。あるじゃん?年上が好きとか年下が好きとか」


裕二が便乗してくる。


「頼れる人が好きだとか、甘えられるのが好きとか」


と隣で佐々木も身を乗り出した。


「優しい人が好きとか」



最後に桐島が口を開いて、野郎どもの視線が柏木さんに集中する。