由貴くんはドアノブに手を置いたまま固まってあたしを見てる。
あたしもただ黙って由貴くんを見てた。
「……どこか、出かけるとこだったの…?」
私服姿の由貴くんを見て、思わずそう聞いた。
「………っ」
由貴くんはあたしからスッと顔をそらして……ん…と頷いた。
その仕草にあたしの胸はチクチク痛んだ……。
やっぱりまだ……疑ってるんだ。
辛くて、思わずうつむいた。
「………あの……」
「誤解だから…っ!あたしっ、由貴くんに疑われるようなこと…っ何もしてないから……。だから…っ」
何を言われるのか怖くて……由貴くんの言葉に被せて一気にしゃべった。
「……お出かけの邪魔してごめんなさい…っ!か…っ、帰る…!」
それだけ言って、くるっと後ろを向いて走り出そうとした……
…その時―――
―――グイ…!
「………!?」
あたしの腰に長い腕がまわる。
「………ごめん。」
「………っ!」
由貴くんが、小さな声で…帰んないで…と言った。