【side由貴】
「………由貴くん~~…。あたし、まだコレ巻いてなきゃダメなの~~??」
心底嫌そうに…ピンク色の唇を突き出して、にこちゃんが自分の体に巻き付けられたシーツを摘まむ。
「…………ダメ。」
俺は有無を言わさずそれだけを返す。
「~~~っ!……なんでここまで巻き寿司なのっ!?これじゃ身動き取れないじゃんっ」
顔しか出せないにこちゃんは、自分のことを『巻き寿司』と称してシーツを取ることを許さない俺のせいでご機嫌ななめだ。
「…………。」
本人はブーブーと文句を言っているけれど……
小さな顔だけちょこんと出してシーツに埋もれるその姿は………
大変に可愛かったり……………。
「…………っ。」
微かに笑いをもらせば、
「…………また、笑う……っ!」
「…………!?」
すぐに気付いて頬を膨らませる。
にこちゃんは……すごい。
俺の無表情をすぐに読み取ってしまう………。
無愛想で無口な俺は、ただ黙っているだけでよく、怒ってる…と言われるのに………。
彼女は俺の微かな表情の違いが解るのか………絶対に…それを言わない。
自分をよくわかってくれているようで………それは堪らないくらいに嬉しかった。