………いた……。


隅の方の席に一人ポツンと座っている幸枝を見つけた。



「…幸枝さん…」


俺の声に俯いていた幸枝は、はっと顔を上げた。



「ショウ…ちゃん…」


「申し訳ありません!!幸枝さん!」


俺は幸枝に頭を下げた。



「…私との約束…忘れてたのね…」


「ほんとに…すみません…。」


「…私みたいなおばさんとご飯なんか食べても、おいしくないものね…」


幸枝の瞳には涙が溜まっていた。


「そんな事無いよ。幸枝さんは、凄く綺麗だし、楽しい人だよ。約束を忘れてた俺がバカだったんだ。」


そう言いながら、俺は幸枝の涙を指で拭う。


「…ショウ…ちゃん…」


「ホントにすみません…幸枝さん…」



幸枝は、首を横に振り、立ち上がった。


「いいの。…だって、こうやって来てくれたんだもの。

…お店、行きましょ。ショウちゃんの注ぐお酒が飲みたいわ。」

幸枝は、笑顔で俺に腕を絡めてきた。