俺は、莉子の方をチラッと見た。


まだじっと座ったまま、帰る気配が無い…。


…ったく、何で来たんだよ…。



「ショウちゃんどうしたのぉ~?」


「…え?あ…ごめんね。」


俺は客の方に向き直った。


客は俺にしなだれかかってきた。


「ねぇ、ショウちゃん…何か欲しいものある?私、ショウちゃんにだったら、何でも買ってあげるわよ」


この客は上客だ。どっかの会社の社長夫人らしく、いくらでも金を使ってくれる。
この日も、高級ボトルを1本入れてくれた。


「幸枝さんから戴ける物ならなんでも…。お任せしますよ。」

俺は、客の肩を抱き、耳元でそう言った。

「分かったわ。ショウちゃんに似合う物、プレゼントするわね。」


…この客、幸枝は、週に2~3回は店に来ている。

金は有り余る程贅沢な暮らしをしているが、夫婦生活は円満とは行かないらしい…。


その憂さを若いホスト達で晴らしていると言う訳だ。



年甲斐も無く、潤んだ上目遣いで俺を見つめてくる幸枝の髪を撫でてやった。