男の足が止まった。


顔を上げると、そこにはまだ新しいアパートがあった。


「早く来いよ。」


男はアパートの階段を登って行く。


「え…?…あ…。」



私もとりあえず、階段を上がった。



階段を登って一番奥の部屋の前で男は止まり、鍵を開けた。


「入って。」


男に促され、靴を脱ぎ、部屋の中に入る。


「とりあえず、顔洗えよ。顔すごいよ。」

「うるさいわねっ!」



タオルを借り、洗面所に行った。


「うわっ…!」


鏡に映る自分に驚く。

髪はボサボサ。マスカラはボロボロに落ち、アイライナーも、涙で黒い筋になってる。

私はバッグから、メイク落としのシートを取り出し、ボロボロの化粧を落とした。



…なんか、凄くみじめ…。



また涙が出そうになって、冷たい水で勢いよく顔を洗った。