私が恭司と付き合うことを決めた理由は、この時期は特別好きな人がいるわけではなかったし、仲が悪かった恭司からの告白に戸惑いながらも嬉しかったからだ。


中学を卒業して、明日からは別々の高校へと進学する私達が、もうあの頃のように口喧嘩も出来なくなると思うと、どこか寂しくて、付き合っていけばそんな昔の溝も埋めていけるんじゃないかと思った。

告白時の恭司の穏やかな態度が、なによりも私の心を惹きつけた。

「恭司くんカッコいいからいいじゃ~ん!自慢の彼氏だね!」


「まぁ~ね~……」


すっかり調子を取り戻した愛子がニヤッとする。


恭司はそこそこモテる。顔もキリっとしてて、オシャレだった。
ルックスから言えば申し分ない。

私の周りにも恭司を好きだった女の子が何人かいたくらいだ。


「っていうか、もしあたしが断ってたらどうするつもりだったのよ?」


「すみれは面食いだから!恭司君、顔はいいのになって前言ってたじゃない!だからそんなこと考えなかった!」


調子のいい愛子と顔を見合わせ、二人は声を出して笑った。


好きか嫌いか今の気持ちはどうであれ、恭司と一緒にいる時間を過ごすうちに好きになっていくだろう。
さすがは親友というだけのことはある。
そこまで深く考えていなかったにしても、私の惚れやすい体質を知らず知らずにうまく利用している。


「じゃぁ、愛子またね!」


「恭司くんと仲良くね!」


手を高く振り合い、暗い歩道で一瞬愛子の姿を見送ると私も家に向かって歩き出す。