「場合によっちゃ怒るかも!……な~んつって。怒らないから話してよ」

愛子の不安そうな顔を覗き込む。


「……うん。実は、実はね。優くんと恭司くんって仲が良くて、よく遊んでるらしいんだけど……」


どこか申し訳なさそうに控えめな口調の愛子の話に、うなずきながら私は聞いていた。


「恭司くん、周りの友達みんな彼女がいるからって……彼女を欲しがってて……。誰か恭司のこと好きな子いないの?って彼氏に聞かれて。

つい……、すみれの顔しか浮かばなくて……」


ゆっくり音を立てて押していた自転車を私は止めた。


「えぇっ!?ってことは、私が恭司を好きだってことになってるのっ!?」


“今日で私の心臓は壊れる”そう思ったほど、今日は仰天続きだ。
あやうく今度は腰を抜かしそうになった。


 まさか私が恭司を好きだということになっていたなんて?!
驚いた表情のまま固まっている私を見て、愛子がしゅんとする。


「ごめん……。ホントごめん」


そう言って、少し泣きそうな顔で立ち止まったと思うと、突然勢いよくまた話出す愛子。


「でもね!すみれの名前が出たとき、恭司くん嬉しそうにしてたって聞いたよ!自分から告るって言ったんだし、ホントは恭司くんだってすみれのこと満更でもないんじゃないかな!」



「分かった!分かったよ!そんな泣きそうな顔しないで~。もう付き合うって決めたんだし、上手くやっていくよ!恋愛って両想いの確率の方が奇跡に近いくらいなんだし、だんだん好きになっていけるよ。…ねっ!」


愛子が必死にフォローしてくれている姿がやけに可愛くて、私は思わずプッと吹いてしまった。


 うまくやっていけるよ……これからはきっと。
ホッと安心した顔の愛子を確認した私は、そう思いながらまた歩き出す。