空が暗くなり、寒さが一段と厳しくなった。
それ以降は恥ずかしくて、私と恭司は目も合わせないままそれぞれ家路につく。

私は自転車を押しながら愛子と家までの道のりを歩いていた。


「なんで私なの?不思議でしょうがないんだけど」


仲の悪い恭司と突然付き合うことになった仰天の展開に、いつまでも信じ切れないでいる私。

愛子、優、恭司の三人の間に何かあったはずだと直感した私は愛子にポツリとつぶやいた。


「恭司くん、すみれのこと好きだったみたいだよ……」



「嘘だぁ~!あんなに仲悪かったのに?中2の頃から話したことないんだよ?あり得なくない?」



「好きだったんじゃないのかなぁ?……ほら、子供ってさ、好きな子いじめるじゃない?それと同じで」



問いただす私の言葉に、最初は戸惑い気味の愛子だったが、次第に少し慌てたような様子で早口になる。
やけに身振り手振りが大きい。



「ふ~ん。それで愛子に頼んで、私を呼び出したって訳ね?あの恭司が私をねぇ……やっぱりあり得ない!だってあのクールを売りにしてるような恭司がだよ?彼女だって作らなかった恭司がだよ?なんで私なのよ?何か知ってるんでしょ?」



この思いもしなかった出来事に納得いくまで愛子を意地悪そうに問い詰める。


「すみれ……怒らないで聞いてくれる?」



愛子の言葉に『ほらきた!何かある!』と思った。


誰が誰を好きだとか、そんな噂はすぐ広まるような小さな街の学校で、恭司が私を好きだなんて聞いたこともない。
ましてや仲が悪かった相手だ。