『おまえムカつくんだよ!』などと、いつケンカを吹っかけられてもいいように私は心の準備をしていたのだ。

恭司が口を開こうとした瞬間、つられてビクッとしたのはそのせいだ。

全く予想外の展開に唖然とするばかりの私。


バクバクという音が次第に強まり、恭司にも聞こえてしまいそうに高鳴る心臓の音。
遠くに小さく見える愛子たちに目を向ける。


 誘いの電話のときに恭司がいることを言わなかった愛子のこと、終始ぎこちなかった雰囲気も、今なら納得できる!

戸惑いながらも、混乱していた私の頭の中で全てが解決した。


 どうしよう……なんて返事すればいいの?あぁ!!わかんない!!

顔を見合わせる度にケンカをしていた相手だ。
ここにいると知っていたら私は来ていない。

今、この瞬間の私の気持ち次第……。よしっ!


平静を装ってうつむいたまましばらく黙っていた私は返事を決めたように小さくうなずく。
ゴクリと息を飲み、思い切った。


「よっ……よろしくお願いしますっ……」


口を開こうとした瞬間緊張が走り、思わず目をつぶった。


 言っちゃった!!

ギリギリまで悩んでいた私は、口走った自分の答えにびっくりしていた。
寒さでピンク色だった顔は、みるみるうちにカァっと熱を帯びていく。

照れたように恭司がニヤリと笑い、遠くで待つ愛子たちに手を振った。

待ちかねたように走ってきた愛子達の姿が、私にはとてもスローに見える。
優に向かって、握った拳から親指を突き立てて微笑む恭司。


「やったね!仲良くやってね!真都里!」


愛子は飛びつくと、その勢いによろめいた私の背中を何度もポンポンと優しく叩く。
私の顔はいつまでも熱かった。

これが二人ののはじまりだった。
しかし、この後の私は衝撃的な告白の背景を知ることとなる。