しかし、ひとりになった私の足はとても重く感じる。

自転車にも乗らずにゆっくり押し歩きながら、さっき愛子に言われた言葉を思い出していた。

 

 恭司は私を特別好きだった訳じゃない。
ただ、愛子の口から出てしまった嘘を信じているだけ。

 彼女が欲しかっただけ……。恭司は誰でも良かった?


頭の中にはネガティブな言葉しか出てこない。


それもそのはず。
友達のとっさに出た名前がたまたま自分だっただけで、恭司は私を好きだった訳じゃない。


「ただいまぁ~……」


複雑な心境のまま帰宅した私は、告白された帰りなのに心が弾むどころか、しょんぼりしていた。


 嘘をついた愛子も、嘘の告白をした恭司も悪い訳じゃない。
これが恭司と仲良くできるきっかけになったんだ。
恭司と仲良くなれるチャンスだ。


そうは思っても、やっぱり嘘の告白をした恭司の気持ちが気になって仕方ない。

「すみれ、食欲ないの?」


「ん~ん~……明日から高校だからさ~……ちょっと不安なだけ」

いくら女性であっても、母には恋愛の相談も恥ずかしくてできない。
私には3つ年上の姉もいるが、男の“お”の字もないガリベンの姉になんて尚更相談できないのだ。



「ごちそうさまぁ~……」


「あら、もういいの?」


夕飯も食べた気がしないまま、私は母の声にも上の空で部屋に向かった。