「姫月?」


華耶の言葉にあたしは我に返る。


「お金……」


そう言って華耶は五百円玉をあたしに差し出して来た。


「あ……いいよいいよ!サービスするし」


あたしはお金を受け取らずにそう言った。
これ以上華耶と大地を目の前に、笑えそうになかった。


「でも……いいの?」


「いいのいいの!まだ回ってない所あるんでしょ?早く行きなよ!
いいなー…あたしも好きな人と回りたかったなー」


あたしは声に出した後に、その言葉の意味に気付き、言ってしまった事を後悔する。
さすがに今の台詞は華耶の前では言ってはいけなかったと思う。

だけど、それに対する華耶の一言に、あたしは呆然とした。


「姫月も早く好きな人つくりなよ!そしたら教えてね!」


一瞬聞き間違いかと思った。
どうしてあたしに好きな人がいない事になっているのだろう。

確かに付き合ってるいのは華耶だし、あたしが諦めなくてはいけないのは分かっている。
でも、さっきの華耶の言葉は、まるであたしがもう綺麗さっぱり大地への想いを断ち切った様だった。
あたし、いつそんな事言った?


「う…うん……」


あたしは今にも泣きそうな声で言った。

あたしの気持ちを全否定された気がして、悲しくなった。
悔しくなった。

早く、目の前から居なくなって欲しい。
あたしの涙腺が緩む前に。


「あのさぁ……早くどっか行ってくんね?邪魔」