ふと、弥琴の顔に目を移す。



(……あ、睫毛長い……)



どこから見ても美青年、という感じ。
そういや、昔はよく女の子に間違われてたっけ。
あたしもはじめはずっと女の子だと思っていて、『みことおねえちゃん』なんて呼んでた。



光に透ける栗色の髪。
真っ白な肌。
端正な顔立ちに、長い睫毛。


それに音楽の才能もあるときた。
弥琴は音大で圧倒的なピアノセンスで注目を集めているらしい。
超絶技巧なんかもさらっとこなしてしまうとか。


けど、あたしの前では一切そういう曲は弾いてくれない。どうして、って聞いたら
『そんなの楽しくないでしょ』て、笑った。





───あたしにとっては、弥琴のルックスでもピアノの腕でもなく、“弥琴自身”が一番大切。
でもそれはきっと、恋愛感情にはならない。



だって弥琴はずっと、あたしの中では“お隣のお兄ちゃん”なんだもん。