まるで自分の家かのようにローファーを脱ぎ捨て、慣れた足どりで階段を上る。


弥琴の家とうちの家は、あたしが生まれる前から仲が良かったみたいで、あたしは昔からしょっちゅう親に連れられ、この家に遊びに来てた。

だからもうほとんど自分の家みたいなものだし、弥琴だって、家族同然の存在なのだ。


二階の一番奥にあるのが弥琴の部屋。
あたしはノックもせずに、無造作に扉を開けた。








「おかえりなさい、奏ちゃん。」







───柔らかく微笑む弥琴と 部屋中にあふれたピアノの音色が、あたしに今日一番の安らぎをもたらす。



あたしの姿をみとめると、弥琴はゆっくりと鍵盤から指を離した。


「今日は早いんだね。」


「ん。午前授業だったから。」

他愛もない会話をしながら
弥琴はピアノの前に、もう一つ椅子を用意してくれた。
もちろん、あたしのために。