弥琴のとなりで、彼の奏でる“いつもの”曲を聴く。

一つ一つの音を大切に生み出す弥琴の指先に、きゅう、と、胸が締め付けられた。




ピアノの上のグラスボトルは、相変わらず静かにあたしたちを見つめている。





………あたしの中で“弥琴”という存在は、何気無くこれをプレゼントしたあの日とは、確実に違うものになってる。






ぽん





弥琴の肩に、頭をもたげてみる。

弥琴は少し、あたしを見ると、ふわりと笑いかけて演奏を続けた。




─────自分の頬がちょっとだけ、染まるのがわかる。










…………ああ。






やっぱりそうなんだ。