「知りたいですか?」
どこからともなく声が聞こえてきた。
顔を上げると、目の前には長身の優男が立っていた。
シルクハットに杖、その姿は貴族を思わせる。
「君の母を殺した犯人を知りたいとは思いませんか?」
男はもう一度、丁寧な口調で問う。
知りたい。
でも…犯人なんて検討さえつかない。
そんな状況で犯人が見つかるとは…
「犯人の検討ならついていますよ?」
え…今、心を…?
「あぁ…わたくし、心の声が聞こえるんですよ。」
あまりに人間離れした話に戸惑いを見せていると
それを察したように男が口を開く。
「あぁ、わたくし、人間ではないんですよ。」
…え?
見た目は明らかに人間だ。喋り方に違和感も感じられないし…
「魔術師…と言ったらわかりますか?」
「…え?」
やっとの思いで声を出す。
「サーカスや手品師、そういったものはわたくしたち魔術師の職業です。まぁ…世界にそう多くはいませんし、人間ではない、なんて言ったところで誰も信じませんから、世間には知られていませんがね。」