「なーに言ってんの!! あたしの知ってる男子なんて、ほとんど奈央狙い!!」
「えっ……全然知らなかった」
学校では、男子どころか女子ともあんまり関わらないし。
話しかけられたら返すってぐらいかな……。
「奈央可愛いもんな〜」
「そんなことないって!!」
全力で否定。
だって、あたしは真希のほうが絶対に可愛いと思うし。
そんなこんなで真希とガールズトークをしながら、帰り道を何気なく歩いた。
話に夢中になってたせいか、歩いた道なんて覚えてなくて……。
「あ、あたしココに越してきたの!!」
「へぇ〜………………」
って。
………ココ……あたしと日向のマンション!?
口がポカーンと開いたままのあたし………。
だって、これってヤバくないですか?
「奈央〜?……って、ママから着信入ってるし。ごめん奈央。ちょっと待ってて」
「……へ、あ、うん」
そう言った真希は、電柱の影にいって電話をかけ始めた。
少し離れたマンションの入り口で、突っ立ったままのあたし。
え、コレって……え?
頭の中がグルグルなんだけど………。
その時。
「あれっ、奈央〜♪なんで外にいんの?」
うぎゃぁあっ!?
なんと悪いタイミングッ……!!
南さんに携帯を届けて帰ってきたらしい日向が、マンションの駐車場からでてきて……。
「ひ……なたっ」
人生最大の危機ッ!!
顔がサーッと青ざめてくのがわかる。
もしここに真希が戻ってきたら………。
「会いたかった〜っ」
この状況を理解してない日向は、ふざけながらあたしに抱きつく。
「ダメっ……日向っ……あのね………っ」
パニクったあたしは、うまく言葉にできなくって………。
「ごめん奈央〜…………」
「あ」
戻ってきた真希を見て、やっと状況に気づいた日向も拍子抜けの一言を発した。
結婚して約2ヶ月……。
『ワケアリ夫婦』
いよいよバレてしまいました……。
「お……じゃましまーす……」
「ちょっと散らかってるけど、どうぞ」
とりあえず、あのままあそこにいるわけにもいかず……部屋に真希を上げて、にこりと微笑む日向。
リビングに真希が入ったのを確かめて、あたしはぐいっと日向を隅っこにひっぱる。
「部屋にまで連れて来ちゃって……どーするのっ!?」
「どーするもなにも、説明するしかなくね?」
「……だよね………」
日向の事務所からだされた条件。
『絶対秘密にすること』
これが守れなかったら、本当にあたしたちどうなっちゃうんだろ……。
「だ、だいたい日向があんなとこで抱きつくからっ……(泣)」
「新婚がいちゃついて何が悪いの〜。大丈夫、俺が絶対なんとかするって」
そう言った日向は、やっぱり頼りになる。
ソファーの下に座る真希。
あたしと日向は、テーブルを挟んでその向かい側に並んで座る。
「あの……ね、真希」
「すごい………」
「……………へ?」
無表情なままの口から、意外な一言。
真希の目はなぜかキラキラしてる。
「ま……真希?」
どうしたんだって感じで日向はあたしをみた。
いやいや、あたしこそどうしたんだだよ。
「奈央っ!!」
「はいっ……!?」
いきなり立ち上がる真希にあたしも日向も、一瞬ビクリと跳ね上がる。
「あの有名な藍川日向と付き合ってるなんてっ……超すごいじゃんっ!!」
と言ってあたしに抱きついた。
「わっ!!」
「え……意外な反応」
その横で困惑してる日向。
いやいやいやいや、あたしだってびっくりしてるんだけど……。だって………。
「真希、怒ってないの?」
「えっ、なんで?」
恐る恐る聞くあたしに、真希は本気で驚いた顔をした。
「前に、真希が日向のこと好きって言った時。あたし、このこと隠してたし………」
そう。
あの電車の中で、目をハートにして日向が好きと言った真希を、あたしは思い出す。
「ばーか! そんなこと気にしてたの? 友達の幸せ応援するのが当たり前じゃんっ!!」
そう言った真希は、本気であたしを応援してくれて。
「真希ぃ〜……」
感激したあたしは、ぎゅっと抱きしめかえす。
日向との関係を言ったら、絶対嫌われる。
なんてあたしの臆病な考えを、真希は一瞬で吹き飛ばしてくれた。
あ、そうだ。
「あのね、あたしと日向のことは………」
「誰にも言わないで。でしょ?」