「お風呂上がったよー♪」
「あ、うん。電気消した? ……って、なんで上半身裸なのっ………///!?」
寝室のドライヤーで髪を乾かしていると、腰にはバスタオルを巻いてるが、上半身裸の日向が入ってきた。
「え? いいじゃん。どうせすぐ脱ぐんだし」
そう言って、ニヤリとイジワルな笑みを浮かべる。
「なっ……////」
ぼっと、トマトみたいに顔を赤くするあたし。
「あれー? 今さら照れてんの?」
「うっ、うるさい……っ///」
「そんな口聞いていいんだ? どーなっても知らねーからな」
あたしの手からドライヤーを離して、すぐに唇を落とす。
両手首は日向にしっかりと捕まれて、抵抗できない。
「………っ///」
まるで、今まで一緒にいられなかった時間を埋めるように。
深く、激しく唇を重ねる。
久しぶりの日向とのキス。
胸がずっとドキドキして、あたしは今すぐにでも倒れそうだった。
ようやく唇を離したかと思うと。
「どう? 続き、したくなったでしょ」
なんてS笑い。
っうー………///
ゃっぱり、たまに出る日向のSキャラには、叶わなくって……‥。
「………ベッド……いこ……?」
もう!! あたしがこんなにエロくなったのは、絶対日向のせいだーっ///
内心、そう叫びながら、あたしは日向に抱っこされベッドへと降ろされた。
「今のは、ヤバかったかも……///」
と、珍しく顔が少し赤い日向。
「ど、どしたの?」
と聞くと。
「秘密」
そう言って、また深く唇を重ねた。
たまにドSで、エロくて、ムカつくくらいにかっこいい日向。
そんなとこも全部含めて、あたしは日向が大好きなんだよね……。
「………ひ……なた……っ」
「奈央………愛してる」
耳元でそう囁かれて、あたしは日向の暖かさに、涙をこぼした。
おかえり……日向。
「………っん」
なんとなく目が覚めて、隣を見る。
いつもは、冷たくって空っぽの隣に……今は日向がいて安心した。
ちょっとだけ怖かったんだ。
目が覚めたときに、隣に日向がいなかったらどうしようって。
帰ってきたのが夢だったんじゃないかって。
でも、現実にはこうやって日向がちゃんといた。
あんなにイジワルなくせに、生意気なくせに、その寝顔がどうしようもなく可愛くって……またあたしをドキドキさせる。
ふと、枕元に置いていた携帯が光っているのに気づいて、携帯を開く。
受信メール一件と表示するまぶしい画面を、目を細めながら見る。
『RE:ダメだった』
件名を見て、真希からだということが分かった。
メールを開くと、真希はちゃんと南さんに告白したらしい。
だけど、真希がまだ高校生だから。
という理由と。
今の南さんには、誰かと付き合う余裕はないという理由で、断られてしまったらしい。
その内容を見て、少しだけ心が傷む。
だけど、メールの最後に書いてあった。
『だけど、あたしあきらめないから! 応援してよね』
その真希の言葉に、あたしは安心した。
応援……するに決まってるじゃん。
いつか、真希の願いが叶いますように。
そう思って、あたしは携帯を閉じた。
しばらくしてもなかなか寝付けず、あたしはベッドから降りた。
裸だっとことに気づいて、とりあえずそこに畳んであった日向のTシャツを着る。
ぶかぶかで、ひざの上辺りまで身体が隠れるくらいだった。
そして、静かにちょっとだけカーテンを開ける。
「満月だ……」
そこには、言葉にできないくらいに綺麗な満月。
そして、その回りにキラキラと輝く星。
しばらく、その美しさに見とれていた。
「………奈央?」
後ろから声がして、振り返ると眠そうに目をこすっている日向がいた。
「ごめん……起こしちゃった?」
「ううん、大丈夫……奈央、おいで?」
カーテンから入り込む月明かりで、少しだけ照らされた日向の隣に、あたしは静かに寝転んだ。
すると、日向の筋肉質な腕が、ギュッとあたしを抱きしめる。
まるで、ずっとここにいてというように。
「どしたの……?」
日向の顔を見ずに、抱きしめられたままあたしは聞いた。
「……目、覚めたらさ。奈央がいなかったから。もしかしたら、夢でも見てたのかなって思ってさ……」
そっか……日向も、あたしと同じことを思っていたんだね……。
「ごめん、ちょっと……星が見たくなって」
「ん、いいよ。……今こうして、奈央が俺の腕の中にいる。それだけで、幸せだから」
「あたしも、幸せだよ?どこにもいかないから……だから、日向?」
「ん?」
「もう‥‥どこにもいかないでよ‥‥」
あたしが初めて日向に言ったわがままだった。
「………奈央……」
「あたし、日向いないとダメなんだ……。初めて、日向と遠距離になってね……あたしってこんなに弱いんだって、初めて知ったの……っ」
今にも泣きそうなあたしの頭を、日向は優しくて撫でる。
「みんなの前では、心配かけたくないから精一杯強がってみせたけど……。でも、日向のことしか考えられなかった……」
「………奈央……」
そのまましばらくあたしは、日向の胸で泣いた。
その間、日向はただただゆっくりとあたしを撫でてくれて。
こんなに弱気でわがままなあたしを、日向に初めて見せた。
「そろそろ落ち着いた?」
しばらくして、泣き止んだあたしのおでこに日向はチュッとキスをした。
そして、あたしの泣き顔を見て。
「ははっ、子供みてぇ」
と、無邪気に笑う。
「い……いぢわる………」
拗ねて唇を尖らすと、ごめんごめんと言ってあたしを見つめる。
「ごめんな?辛かったよな。でも、こんな俺のこと……ずっと待っててくれてありがとう」
「ううん、あたしこそわがまま言ってごめんね……。ちょっと、気持ち不安定になっちゃって……。もう言わないから安心して?」
えへへ、と笑うとパチンッと日向にデコピンされた。
「いた!……何すんのーっ」
と、言うとそこには、大好きな笑顔の日向がいた。
「バーカ、いいんだよ」
「へ……?」
「俺は奈央の全部が好きだ。愛してる」
「っ////」
「だからこそ、色んな奈央を見せてほしい。もっともっと、わがままな奈央も。泣き虫な奈央も見たい。どんな奈央でも、好きでいる自信いーっぱいあるよ?」
「………っ日向ぁ」
その言葉にあたしはまた泣きそうになる。
「ほら出た、泣き虫奈央」
くすっと笑って、人差し指であたしの涙をすくった。
「俺は、普通のカップルや夫婦みたいに、奈央と堂々と人前でデートしたりできない。
でも、そのぶん違うことで、奈央を最高に幸せにしてやる」
そんなことしなくても、あたしはもう幸せだよ? そう言いたかったけど、涙が出てきてうまく言えなかった。
「最後に一つ、奈央にわがまま言っていい?」
「………?」