「………ざけないで……」




「?」






「………ふざけないでよ!!」






「……っ!!」






必死に涙をこらえながらも立ち上がったあたしに、夏紀さんは一瞬びくっと肩を跳ねらせた。






「夏紀さんにあたしと日向のなにがわかるの!?」






大声で怒鳴ったあたしに負けじと夏紀さんも話し始める。







「そんなの知らないわよ!! あたしはねぇ、あなたみたいな苦労も知らない一般人と、苦労して必死に頑張ってきた日向くんとじゃ釣り合わないっつってんの!!」






「確かにあたしは、まだまだ子供かもしれないけど………あたしなりに苦労だってしてきたし……」







「その考えが甘いっつってんの!! あたしにはわからない。なんで日向くんがあなたを選んだのかっ……」







立ち上がった夏紀さんは、顔を歪める。





「……………」






「………あたしだったら、奈央ちゃんより日向くんを幸せにできたのに……。あたしのものになったら……日向くんだって」






「あなたには日向を幸せにはできない」







「‥‥‥っ!」






強く、そう言い放って夏紀さんを見ると眉間にしわを寄せながら、息を荒くしている。








「……夏紀さんみたいに、日向を"もの"だと思ってる人には幸せになんてできないよ……






「………!?」







今まで必死にこらえてた涙が、一気に溢れてきて……。







「………日向は……ものじゃないよ……ッ」








日向はものじゃないの………。






だから………夏紀さん……。