言いたいことはたくさんあったけれど、なんだかもう、力がぬけてしまった。

怒鳴って、怒鳴られてって、けっこうエネルギーを消耗する。


無視を決めこむことにする。

わたしが無反応でいたら、いずれは飽きて、出て行ってくれるだろう。


気をそらすために、携帯を手に取る。

この居心地の悪さをやりすごすには、携帯でもいじっているしかなかった。

カラフルなブログたちに飛ぶ。今まで、見ないようにしてきたのに。


しばらく、無言の時間がすぎた。


わたしは携帯をなで続け、お母さんは、洗濯物をたたみ続けた。

そして、重さにたえきれなくなったころ、やっと、お母さんが口をひらいた。


「…お母さんね、考えたの」


背中ごしに聞こえる、かぼそい声。

お母さんの声は、吊し切りされて、ほそってしまったような、声だった。


「考えても、考えても、八子の気持ちがわからないから…お母さんね。自分だったらどうするとラクかなって、考えたの」

「………」

「お母さんの場合はね、問題ごとから遠くにはなれると、気分が落ち着くから。前向きになれて、また頑張れるから。だから…おじいちゃんちに行って、すこし休憩するのはどうかなって、思ったのよ」