甲高い笑い声をあげて、長いつけづめをパチパチと鳴らす、嶋田さんたちの様子が浮かぶ。

グチャグチャになった、菜落ミノリの教科書。みんな麻痺して、笑っている空間。

なんのために、わたしはソコに戻るの。だれも待っていないのに。

ソコには、ウソつきしかいないのに。

連れ戻さないで。回収しにこないで。わたしを、バラバラにしないで。


返事をしないわたしに、お母さんが言葉を続ける。

ドアはもうすこし開かれて、わたしの領域に、お母さんが一歩、入ってくる。


「あのね・・・八子。先生がもし、学校に来いって言っても、無理して行かなくていいからね。お母さん、八子の気持ちが、一番大事だから、しばらく行けませんって、そう言ってあげるから──」


息が、あらくなっていく。おさえられない。

なにを、言ってるの、このひと。



「お母さん、八子の味方だからね」



なにが味方。なにが、一番大事。

苦しい。たまごの腐った味がする。