倒れ込まずに、ベッドのはしに座る。

背ぼねを丸める。ムカムカした。口に残るタマゴの味を、吐き出してしまいたい。

最低。サイテイ。

こんな家、飛び出して、二度と帰りたくない。でも、飛び出せない。

だって、わたしが行く場所なんて、どこにもない。


荒ぶった気分は、おさまらなかった。

けれど、片づけたばかりの部屋でモノを投げてはいけないという、そんな冷静さだけはどこかにあった。

ベッドの上を、まさぐる。リモコンをつかむ。

すこしでも、気持ちを落ち着けたかった。しばらく聴いていなかった、ラジオをつける。

流れ出す。テレビよりも不安定な、若干の雑音をふくんだ、電波音。


ふかく、息をはいた。

戻れたら、と思った。


『中学二年生男子、ジュウエンムイチさんから──』


あの放送が流れた日に戻れたら、そしたら、なにか変えられたんじゃないかな。

ニハシノコ。ジュウエンムイチ。わたしたち、二人。ナオチミノリ。三人とも。


田岡のために。わたしのために。考えたって、どうしたらいいか、ひとつも浮かばないんだ。


戻れたら、わたしは、今日のご飯を食べ切れていたかな。

おじいちゃんちに行けなんて言葉を、投げられずにすんだかな。