「…お前まで付いてくる必要無かったのに。」

「良いんだよ、俺はお前と走りたいんだ。」

「だからって向こうからの推薦蹴らなくても…」


…推薦、か…

中3の、東海大会
準決勝のタイムが出れば2位で全国に行けた。
でも俺は決勝に出れなかった。

…準決勝直後、太もも裏の肉離れを起こした。
それから2ヵ月、走ることを禁じられた。

でも東海のファイナリスト、しかもベストタイムなら東海2位ってことで、いくつかこの辺の有名校が来ないかって言ってきたけど全部蹴った。
…それは…こいつと走りたかったからだ。

陸上を始めるきっかけをくれたこいつと。
俺の人生を変えてくれたこいつと。


「お前も推薦来てただろ?東海行ったんだし。」

「いやぁ、俺なんて所詮予選落ちだし、親が私立行くなってうるさかったし…なにより才能ある奴集めて強いだけなのに、それを自分が育てたかのように振る舞う監督が嫌だしさ。」

それは違う…とは敢えて言わないでおこう…
強い学校は監督も良いモンだ。

「それにここは公立高校なのに過去6人インターハイに出てるんだぜ!しかも今の顧問になってから、この11年で!顧問の力バリバリじゃん!」

「だから俺も、お前に付いていこうかなって思えたんだよ。」