「早坂さん、お母さん来ましたよ」


先生の声に気が付き時計を見れば、もう1時間過ぎていた。
結構集中してたのかなぁと反省する、私はいつも自分の世界に入り込む癖があるから。
いや、もしかして少し寝てたのかな?



「蘭、具合大丈夫?」

「うん、横になってたら結構良くなったよ」

「じゃあ帰ろっか」



お母さんに連れられ駐車場に迎う。
駐車場へはグラウンドの横を通るため外の運動部がよく見える。
今日は入学式だからか、グラウンド脇に1年生らしき集団がいくつもあり、あの人うめーなとか、あの人かわいーとか言いながらサッカー部やらハンド部やらを見ている。


――バスケもうやんないけど、運動はしたいな―

そう思って歩きながら目を向ける。




―と、そこに一人の男子が私の近くを走り抜ける。

………その姿はとても綺麗で……










なんだろう、一気に脱力感を覚えた。

美しく走るその様はまさに見るものを魅了した。
私はその走りに惚れてしまった。

腕のしなやかさ、足運び、すべてが綺麗だと思った。





……うん、決めた。私、この人みたいになる!









走る彼の背中には、「陸上命」と書かれていた。