想雫side

「はい。コレは今日の分。んで、1組の女子が校舎裏にって呼んでるよ」

テキパキと俺に手紙とプレゼントの山を渡し、指示しているのは、俺の数少ない友人の1人、要南晃嵐。

「校舎裏っ!?遠いな・・・。晃嵐、お前が行って、断ってこい」

「いやいや。場所で行く行かないを決めて、どうすんだよ。」

「俺の代わりだって言って、断ってこい」

「モテモテの篠等木想雫の代わりなんて言ったら、俺、生きて帰れないじゃん」

俺の名前は、コイツが言ったように、篠等木想雫。

何かよぉ知らんけど、俺には毎日、大量の手紙と大量の呼び出しがくる。

晃嵐によると、ソレはあんま言わんほうが、俺の身のためらしい。

でも、どーせ関西弁で喋って生活したら、一瞬でそんなん無くなるやろーなー・・・。

だからと言って、ソレは無理。

昔、この関西弁でイジメられてから、晃嵐以外とはあんま喋らんと、標準語を使うようになった。

「いや、お前は充分カッコいいぞ」

「お世辞はケッコーだよ」

確かに、晃嵐はお世辞にもカッコいいとは、言えない。

晃嵐は可愛いんだ。

だからって、モテるのには、違いない。

「1組の女子、断ってきてくれたら、新発売のど飴あげるのにな・・・」

「新発売のど飴!?想雫・・・俺、頑張るからなっ」

「おー。頑張れ」

のど飴効果、最高。

何でかは知らんけど、アイツはのど飴が大好きなようだ。

「よし・・・」

晃嵐が、無事に仕事を終えて帰ってくるのを待っている間に、次の授業の準備をしよう。

「・・・ん?」

机の中に入れた手に、何か紙が当たった。

・・・あちゃー、コレ、い1年の琴味ってヤツに届けなアカンかったんや・・・。

1年の校舎・・・地味に遠い。

でも、晃嵐はきっとヘトヘトで帰って来るやろうから、晃嵐には、頼めない。

「仕方ない。今から行くか」

俺はガヤガヤとうるさい教室を、サッサと出た。