ニヤリと男が口端を上げる。


『俺は、和―――んで』

『椿、だ』

『だけど、椿とは呼ぶなよ』


和は俺の肩を掴むと、耳元に顔を寄せた。


『?何故だ?』

『椿は、俺たちの要だからな』


呼ぶときは『桜姫。』だ。


通り名のようなものだと考えればいいのだろうか。


(ま、何でもいいか)


俺にはさしたる重要性を感じないから。


俺は、和に頷いて見せると、和はよし、と離れる。


『つーことで、よろしくな』

『あぁ………こちらこそ』


よろしく、と桜姫に目を向ければ、バチッと瞳が合う。
吸い込まれそうな漆黒に、俺は、魅せられそうになる。


『で?肝心なお前の名前は?』


言われて、そう言えば自己紹介してなかったなと苦笑した。


『俺は、………司だ』