『おいっ』


部屋から出ていこうとする男を呼び止める。


『あ、俺達は、皇蘭』


じゃ、と手をあげて部屋を後にした男に、俺は、唖然としながら見送った。








"皇蘭"


その名前を知る奴は少ない。否、殆どいないと言っても過言ではなかった。




『おー久々』


『……………』


やっとたどり着いた"皇蘭"。
古びた小さな工場。
出迎えてくれたのは二人。


『調子はどーよ?』

『……悪くない』

『そりゃぁ良かった』


ケラケラ笑いながら、男は『桜姫!』と名前を呼ぶ。


『何、和』


ひょこっと顔を出した女は、額のガーゼはとれ、若干眠たそうな顔で現れる。


『寝てたのか?』

『起きた』


ふらふらとしながら歩いてくる女は、俺を認めると眉を寄せる。