「嘘だ…
嘘だ…
そんなはずはない…
紗衣が…
紗衣があんなことを言うなんて…
紗衣が、僕以外の男に、あんなことをするなんて…
間違ってる…
君は間違ってる…」


ぶつぶつと呟く山本くんの声が遠ざかる。


その声に向かって、振り返ることなく、あたしは言った。


「あたしのこと、紗衣って呼ばないで!
玲音しか…。
男の子では、玲音しか。
あたしのこと、“紗衣”って呼んじゃだめだから」