「まぁ。
僕にはわかってたけどね」


なるべく離れようとするあたしの視界の片隅で、山本くんが本棚にもたれ、くすくすっと笑うのが見えた。


「緑川さん。
芹沢くんに呼ばれるといつも嫌そうな顔をして、そして僕に目で訴えていたよね」


「…」


ん?


山本くんが何を言いたいのか、よくわからない。


でも、本を戻し終わったから、無視してみんなのところに戻ってもいいよね?