何がそんなに大変かって――…


「緑川さん。
サボろうなんて、考えないでくださいね」


斜め前の席の、黒縁メガネの、まじめ男子の山本くんが、メガネのフレームをクイっをあげて、薄い唇を引きつらせるように歪ませた。


「まぁ、逃がしてなんて、あげませんけどね」


ギャー!
怖いぃぃぃ!


メガネの奥の一重まぶたも、薄い唇も、敬語すらも、怖い!