『パリに戻れなんて、簡単に言うなよな?
オレが何のために戻ってきたと思ってんだ』


苦しそうに眉根を寄せて呟いたいぢわる王子は、その時を境にぱったりと――…


あたしに絡むのはおろか、視線さえ合わせてくれなくなった。


あたし、迷惑なんて、思ってないのに。


あたしは、ただ…
戸惑ってただけなのに。


いぢわる王子とあまあま王子。


どちらが本当の“芹沢玲音”なのかわからなくて。


それでも、“好き”


そう自覚してからは――…


ただただ、恥ずかしかっただけなのに。