「――――嘘だと思ってる? いるわよ。悪魔。」
真剣な目つきで女は言った。
「だッ――――て、悪魔は・・・・」
悪魔は人が想像してこんな物があればいい。と思ったものを自分の欲で作ったんだ。
自分のせいにしないタメ。
人に責任を押し付けるタメ。
「あなたが会ったのは間違いなく悪魔。知ってる?人が想った事 言霊にした事は結構 実現するのよ。」
彼女はサラリと言った。
俺には結構 衝撃的だった。
俺は実はそういうのを信じない類だ。
悪魔なんて存在しないと思っていた。
でも 霊がいるんだ。
悪魔もいるんだろう。
しばらく何も言えずボーッとしていると女が口を開いた。
「――――と。自己紹介。まだだったわよね? 私の名前は安部 美嘉。よろしく。」
彼女はそう言って俺に手を差し出した。
「え。・・・・ぁ。俺は山瀬 亜季。よろしく・・・・・。」
ふいに手を出されたので 思わずその手を握る。
彼女の手は温かった。
“人”の手だ。
彩が死んで以来、誰かと手を繋ぐ事なんかなかった。
温かい。
鼓動を感じる。
彼女が生きてる証拠を感じる。
彩―――・・・。
「お、おい!長いだろ。握手・・・」
ふと見上げると美嘉は少し照れていた。
俺は彼女を見、クスッと笑った。
笑えた。
自然な笑顔で。
彩が死んでからは ずっと作ってた。
だけど 今は自然に笑える。
「あ、亜季!手を離せってば!!」
女・・・美嘉は今までのクールさが嘘のように顔を赤く染め、俺に上目遣いをした。
「悪かったって。」
俺はまた笑って 手を離した。
そして美嘉の目から離さずに言ったのだ。
「ありがとな。美嘉。」と。
何故か 今頃になって前から美嘉とずいぶん前から知り合っていた感覚になる。
何故かはよく分からない。
でも 美嘉といると自然な笑顔でいられる事に気づいたのだ。
だから―・・・・
「ありがとう。」
美嘉には感謝しなくちゃいけない。
「な・・・にがだ?」
主語がない俺の礼は美嘉には分からないらしく。
頭に?マークを浮かべた。
「何もない。」
俺は彼女にそう言う。
美嘉は絶対何か隠してるよ・・・と、ぶつぶつ言いながら俺を見た。
「・・・・・。」
「・・・・・。」