小学校6年のとき、
人ごみが苦手だったわたし。

上手く人を避けられず
聡とはぐれてしまった。


私なんか気づかないみたいに
どんどん離れていく後ろ姿を見て、自然と涙が溢れて。

私はそのまま家に帰ってしまって、散々な思い出になったんだっけ…。



「ちょ、聡!」

早い!
早いわよっ!
ばか聡っ!


聡の長い足に私の短い足がついていけるわけ無い。




「聡!」

ほんの少し前を歩く聡。


だけど、
周りのザワザワした人のせいで聞こえないみたい。



「…聡……」

もういい。
疲れたよ、私。



聡の暖かくて、優しい…

大好きな手を
自分からそっと離した。



すぐに私なんかは人ごみに紛れて見えなくなる。


背が高くて、
少し他の人から抜き出ている聡の頭。

私が居なくなったことに気がつかないみたいに、
前に、進む。



「……さとし…」

懐かしい胸の痛み。