「…さむーい!」
「ほんとほんと。」

白い息が二人を包む。
両手をこすりながら外に出た。



辺りは一面が雪で、本当に寒い。
秋田はこーゆーとこが嫌なんだよなぁ。

毎日徒歩で学校に通う私たちにとって、登下校は地獄の時間。
こうやって友達と話してないと、心まで凍りそうなくらいだ。




「今日さー、氷点下だって」
「まじで?!なにそれ私たちを殺す気かっての!」

「誰が(笑)」
「えーっと…神様が?」

「あはは、何それー」




私、橘実(たちばな みのり)と
親友の小野寺 結花(おのでら ゆか)は、

そのまさに地獄の放課後を耐えながら歩いていた。








中学最後の冬。

受験生という肩書きを名乗ってながらも、実際は何も変わっていない。



「みんな必死だね~、ほらあの子とか」

結花は眼鏡の似合う女の子を指差す。
その子は参考書をめくりながら歩いていた。




「あれはやりすぎでしょ、雪で紙がふやけるっての」

「たしかに(笑)」