『関係者以外立ち入り禁止』と書かれた札の下がるチェーンを押し上げる栄さんの後に続く。

その先には『出演者控室』とある。


まさか……

翔に会えるの?

胸が高鳴る。

会いたい!

今、この瞬間、翔に会いたい。

でも、他のメンバーと合流し、ステージに立つ翔の歌声が耳に届く。


栄さんは突然私の腕を強引に掴むと、『関係者控室』に入った。


「単刀直入に言うわ。翔に近づかないで」

「あの……?」


何を言われているのか分からない。


「今の撮影に入ってから、あの子、変ったわ」

栄さんはパイプ椅子に腰を下ろし、足を組んだ。


「葛城翔は『クール』で『孤独』で『ミステリアス』がウリなの。そのイメージを大事に育てて来たのよ」

「はぁ……」

「ねぇ、分かる?一体、どれだけの人間が、翔のようなスターになりたいと望んでは消えて行くか……。そして、私達がどれだけの時間を掛けて、彼を育て上げて来たか……」

何が言いたいの?

この人。

分からないけど、凄い気迫に思わず後ずさりそうになる。

「はっきり言うわ。翔と別れて欲しいの」

「えっ?!」

「あなたみたいな一般人と付き合うことが、彼にとってプラスにならないことくらい、分かるでしょ?」


こ、この人、勘違いしてる!!

「違います!」

私は力の限り声を張り上げる。

「じゃ、何のプラスになるって言うの?」

ああっ!

もんのすっごい勘違いしてる!!

翔と付き合ってなんかいないのに!


「翔と私は……」


そう言い掛けて、突然開いた部屋の扉に言葉が遮られた。