翌日、コンサート会場に向かう。

6万人は収容できると言うその会場は、既にほぼ女性のフアンで埋め尽くされていた。

夕闇が迫り始めた頃、突然照明が落ち、花火が上がる。

オーロラビジョンには、SILVER5人のメンバーがバイクに乗って舞台に上がる様子が映し出される。

こんな派手なコンサートなんか観たことが無かった私はただただ言葉を失って、ステージを観る。

彼らは立て続けに曲を歌う。

周りの女の子たちはみんな立ち上がって、踊るように手を打っている。

「ショォォォォォーーー!」
「リューーーーーーーー!」
「セーーーーーーーーイ!」

歌いながら彼らは女性フアンにウインクと投げキスで応える。

私に気付いたのか、翔が歌いながらウインクする。

「キャーー!私に翔がウインクした!!」
「違うわよ!私によ!!」

周辺で起こるフアン同士の言い争いも、ステージの音響にかき消される。

アップテンポなステージ。
華やかなライトが当たる眩いばかりの舞台。
私が知る世界とはまるで別世界だ。

そして、彼らの人を惹き付けて止まない存在感。

圧倒される。

私一人、場違いだ。

椅子から立ち上がることもできないまま、ステージで歌う翔を見上げた。

胸が痛い。

私と翔とでは生きる場所が違う……違い過ぎる。

来るべきじゃなかったんだ。


うちに来て食事をする翔。

懸命に受験勉強をする翔。

おみやげを渡しながら笑う翔。

でも、本当の彼の居場所はここにあるんだ。


激しいアクションを伴った歌の後、私はコートとバッグを持ち、帰ろうとした。



その時、照明が暗くなり、ステージに翔だけが現れた。