「和尚は赤ちゃんを授けてくれたかも知れないけど」
ぼくは冷たく震える声で言った。

「いまの、きみの彼氏はぼくだから。和尚はきみのところへはもう、帰ってはこないよ」

「…わかってる」

「わかっていればいいんだ」


ぼくは、結花を優しく抱きとめた。
結花は、やや身体を固くしていた。


「これからもいろいろあると思うけど、ぼくは結花とずっと一緒に生きていきたい」

「…うん」

「結花が進路を決めないならそれでいい。いざとなれば、ぼくがきみを養う」

「え」
結花が一瞬、小声をあげた。

ぼくは急いで、冗談っぽく言った。
「赤ちゃんが欲しいなら、ぼくが産ませてやるよ」

結花はくすっと笑って、ありがとと寂しく言った。