「……どんなところか見てみたかっただけなの。ほんとにそれだけ。行こうだなんて思ってない」

ぼくは、ひどくショックを受けた。
やっぱりそうか。
結花は、まだ和尚に未練を持っているんだ。

ぼくはいたたまれなくなって、思わず部屋を出て行こうとした。

「待って!」
と結花が言った。


「翔ちゃんのことが好きなのはほんとなの。でも、まだわたし、和尚との赤ちゃんのことも引きずっていて…」


ぼくは、息をのんだ。
赤ちゃん…赤ちゃんか…。


ぼくは、また敗北感を味わった。
同じだ…、あのときと同じだ…。


でも、ぼくはあのときほど、弱い男でもなかった。