電車がキーッと急ブレーキで次の駅で止まったとき、ぼくはふと結花は大丈夫かと思って隣を見た。

すると、彼女の視線は、ぼくではなく和尚の方にあった。



ぼくは、とても嫌な予感がした。
…いつか、同じような光景を見たことがある……。



あれは、初めて結花と和尚が出会った、海水浴の帰りの電車のことだった。
結花は、和尚がはしゃいでいる姿に、釘付けになって見ていたのだ。


「もしかしたら…」という不安を抑えて、ぼくはその後もひたすら和尚と男の会話を続けた。
和尚も、ぼくの意見に賛成のようだった。


結花が乗り換えのために電車を降りたとき、ぼくは安堵のため息をついた。
そして、演技を終えた二人は、しばらく黙り込んだ。