「やってくれるな、あいつ」
とぼくはつい、つぶやいてしまった。

「なにが?」
と優しく結花が尋ねてくる。

「いや。それよりぼくらも、なにかべつの乗り物に行こうよ」


遊園地というものは、だいたい奇数人数で行くべきではないのだ。
なにを乗るにしても、二人と一人の組み合わせになる。
愛子は、このことも考慮してくれたと思われた。


ぼくは愛子に感謝して、結花と二人でコーヒーカップのなかに座って、くるくると踊った。
愛子は、ストレートの長い髪をなびかせて、楽しそうにあたりを見回していた。


「ねぇ。結花」

「うん?」

「だいぶ、元気出てきたみたいだね」

「うん。これも、翔ちゃんの励ましのおかげ」