するとそのとき、和尚が「…うん」と声をあげた。
彼は、誰かと電話で話をしていたのだ。


「結花とおれの子ども…欲しかった」


その言葉に、ぼくは一瞬息が止まった。
和尚は、自分の野心のためなら、すぐさま障害物を取り除くような男じゃなかったのか。


「ああ。結花がそう言ってるならそれで」


和尚は、ぼくがいることも気づかず、電話で話を続けていた。
そして電話を終えると、上を向き、しばらく呆然としていた。

そのあと、ふと気がついたように、引き裂いた紙を丸めて、ポンとバスケのシュートのようにごみ箱へ投げ入れた。


ぼくは、そろそろ、ぼくの出番だろうと考えた。