ぼくは、和尚の冷静さが許しがたくて、通行人が振り向くほど声を荒げて言った。


「ばかやろう!!なにが家庭教師だ!!おまえ、そんなことやってる場合じゃないだろ!!」

「翔らしくないな。そんなに興奮して、話ができるのか?」
和尚は、淡々とぼくを受け流した。

「ぼくは、ふつうの男だからな!!」
ぼくの目から、涙が出てきた。

「ぼくがおまえなら、結花をもっと大切にする!いつも、彼女のそばにいてやる!ずっとずっと、離れたりなんかしない!!」

和尚はずっと黙っていた。

「おまえに結花をやるんじゃなかったよ!!」

「まて。翔――」