「そんなこと、ないよ!」

ぼくは、和尚の、初めて結花に目覚めたときの彼らしくない無防備な表情、そして、ぼくへの気づかいから勉強に打ち込んで彼女を忘れようとしていたことなんかを思い起こして、強く言った。


「和尚は、真剣に、結花のことを愛してるよ」

「うん…、ありがと。翔ちゃん」

結花は、紙ナプキンを使いながら、真っ赤な目でぼくを見た。

「やっぱり、翔ちゃんは優しい」

「ぼくは優しくなんかないけど、」


ぼくは、彼女をなぐさめようと必死だった。
結花の泣き顔を見ていると、ぼくも涙が出てきそうだった。


「いつだって、結花のことを応援してるから。ぼくはいつでも、結花のところに駆けつけるから」

「…うん。ありがと……ほんとうに。頼りにしてる」