「わたしは産みたいの。でも、和尚が駄目だって」

「……結花……」

「あの人には、大きな夢があるから」

「うん……」

「あの人の未来に、わたしはいない」


結花は、急に、苦しそうに顔をゆがめて涙をポタポタとこぼした。
ぼくは急いで、テーブルの上の紙ナプキンを引き抜いて、彼女に渡した。


彼女は、紙ナプキンを使いながら言った。

「…たぶん、彼にとっては」

結花の声は、嗚咽を殺してのとぎれとぎれだった。

「わたしは…、ただの通りすがりの女の子」