「…こんなやつがいるんだよ」
と、ぼくは結花に笑いながら和尚の話をした。

結花とぼくは、中学3年生の修学旅行のときから付き合っている。

彼女は、全校男子生徒の憧れの的といってもいいくらいの美女で、はじめ、ぼくが交際を申し込んだときにOKがもらえるとは思っていなかった。


ぼくは、彼女に、京都の和紙でつくった小さな人形をあげた。


結花は、恥ずかしそうに「うれしい。ありがと」と言って、大きな瞳をぼくに向けた。

ぼくが、ほんとうに結花に惚れたのは、その瞬間だったかも知れない。